2017上半期Top10

最初は「ノーベル2017年上半期良かったダンスミュージックで賞」っていうクソみたいなタイトルだったんですけどふざけすぎだなと思ってやめました。

 

 

 

DJやってたらこういうのをミックスとしてアップするんでしょうけど、自分はそういうことが出来ないので文章という形でまとめたいと思います。

タイトルの通り、2017年上半期にリリースされた曲の中から好きだった10曲をランキングにしました。早速見ていきましょう。

 

 

 10. Daniel Kandi vs. Witness45 - Yangtze River

 皆さんご存知Always AliveのボスであるDaniel Kandiとアップリフト界期待の若手の一人であるWitness45のコラボです。すっきりしたサウンドと哀愁感漂うリフが大好きなのですが、なによりも聴いた瞬間にDaniel Kandiだとわかるベースの音が本当に好きです。こういう「アーティストの濃い色合い」が大好きで、それゆえにあちこち手を出してサウンドに統一性のないアーティストよりもずっと変わらず同じスタイルを貫くアーティストを好みがちです(Above & Beyondはどうなんだというツッコミはなしでお願いします)。余談ですがWitness45という名義がAnswer42とめちゃめちゃ被って混乱してしまいます。

 

 9. Moon Boots feat. Lulu James - Tear My Heart

Moon BootsがAnjunadeepからリリースした曲です。テックハウスとプログレッシブハウスの中間みたいな曲ですが、最近のAnjunadeepらしい綺麗さとハウスのグルーヴが大好きです。昨今のAnjunadeepは親レーベルのせいなのか、メロディを重視する点や構成にかなりトランスの影響を感じ、ディープ/プログレッシブハウスという枠の中でかなり独自色が強まっているように感じます。曲もさることながら、アートワークが特にお気に入りで、黄色とハートという自分の好きな要素が2つも使われているのです。本当に一目惚れでした。

 

 8. ATHOM - Circuits

続いてはAndea Musicという出来て間もないレーベルから、これまた活動を始めてまだ2年目という新進気鋭のATHOMがリリースした曲です。ブレイクで入るプロッギーなシンセとストリングスの絡みで攻めてくるのかと思いきや、ドロップでは一転してファットで力強いリードシンセが主役として登場する、非常にクオリティの高いプログレッシブトランスです。このATHOMというアーティスト、歴は浅いながらFreegrantやMacarize、Nanostateなど(プログレッシブトランスでは)一定の地位があるレーベルからリリースを重ねており大変将来が有望です。Andea自体もまだ4曲しかリリースされていないにもかかわらず、なんとAbove & BeyondやShane 54、そしてPaul van Dykなどにサポートされており、こちらも目が離せません。注目している若手なので文章長めになりました。

 

 7. Dave Pad & Anjei - Freya

超超超綺麗なディープハウスです。しっとり落ち着いた雰囲気がちょうど梅雨にぴったりではないでしょうか。メロディらしいメロディがなくて聴いてて疲れにくいので流しっぱなしにするのに結構向いていると思います。

 

 6. Grum - Shout

はい、Anjunabeatsです。Grumはどんどんクオリティ高くなっててびっくりしますね…。Anjunabeats Vol.13で聴いた時は全然パッとしない印象だったのが、聴き続けるうちに化けて大好きになりました。大してすごいことしてないように思えるのにここまでかっこよく感じさせるのはすごいことだなと思います。余談その2ですが、この曲、最初はTears For Tears - Shout (Grum Remix)という扱いだったのになぜかGrumの曲扱いに変わっています。そのあたりの経緯は一切わかりませんが、なんとなくリミックス扱いのほうがかっこいい気がするのは自分だけでしょうか。

 

5. Above & Beyond & Justine Suissa - Alright Now (Above & Beyond Club Mix)

はい、A&Bです。1位じゃないの?と思う方も居るかもしれません。ABGT200でワールドプレミアされて以降聴きまくったので新鮮さとかそういう点でこの位置です。曲に関しては本当に文句なしです。音も詞もメロディも何もかもがAbove & Beyondそのもので本当に素晴らしい。名義に関してはおそらくアルバムにオリジナル版が入るということでOceanLabではなくA&B & Justineなのでしょう。Little Somethingと一緒ですね。

 

4. Maywave - Matthew (Kyau & Albert Remix)

リミックスですけどKyau & Albertの最高傑作ではないでしょうか。2015年にAnjunabeatsから久しぶりのリリースを果たして以降の作風は本当に好きで、昨年はASOT Top20にもランクインしているので支持されていることは間違いないと思われます。

 

 3. Solarstone & Meredith Call - I Found You (Giuseppe Ottaviani Remix)

メロディの爽快感!リズムの疾走感!アップリフトの完成形!と声を大にして言いたくなります。原曲がSolarstoneでリミックスがOttavianiという組み合わせで失敗するはずがありませんね。昨今流行りのテック・サイケ系のトランスよりもアップリフトの方が好きなんだと再確認させてくれました。僕の中でのトランスは両手を広げてこそ、です。

 

2. Late Night Alumni with Kaskade - Love Song (Myon Definitive Club Mix)

僕はLate Night Alumniというグループが大好きです。ポップな作風に惹かれたという点もあるのですが、何よりもボーカルであるBecky Jean Williamsの持つ、おとぎ話のようにドリーミーで甘い声が好きなのです。この曲でもその美しい声は余す所なく伝えられており、ブレイクでは存分に彼女の世界を堪能できるでしょう。そしてそんなLNAをリミックスしたのはMyonです。Myon & Shane 54としての活動は昨年で区切りを迎え、今年からはソロで精力的に活動しています。解散したことで以前の"Summer Of Love Mix"ではなくなってしまうのでは、と不安に感じた時期もありました。しかしそんな心配は全く杞憂であり、Myonのサウンドは以前と何ら変わっていませんでした。

 

 1. Myon feat. Alissa Feudo - Omen In The Rain (Myon Club Mix)

というわけで上半期で最も好きな曲はこの曲です。Myonとしてのリスタートを飾る記念すべき一曲であり、本人も相当気合が入っていたのでしょう。個人的には過去のどの曲よりも好きです。少しハウスらしさを感じるダンサブルなリズム隊、ブレイクでの圧倒的なストリングスの重なり、Alissa Feudoが歌い上げる切ない歌詞、そして今までのどの曲よりもエモーショナルな響きを持つシンセリフ。この曲もABGT200でワールドプレミアでしたが、何度聴いても没頭してしまいます。彼がA&Rを務めるRide RecordingsからはEskaiという注目株がブレイクしつつあり、この曲のリミックスでAnjunabeatsからのデビューを果たしました。また、Above & Beyond公式RedditでのAMA(Ask Me Anything)では「時期は未定だけどアルバムも制作している」との回答があったので、こちらも本当に期待度が高まります。作曲とレーベル、どちらも安定したクオリティを見せ続けるMyonというアーティストのこれからも変わらぬ活躍を楽しみにしています。

 

 

以上が上半期のダンスミュージックトップ10でした。やはりというかなんというか偏ってますね。もう開き直ってるので気にはしてないんですが…。正直に言うと、Spotifyのおかげでダンスミュージックよりもポップスを聴くのが楽しい時期が続いていて、ポップスで新たに好きなアーティストをたくさん見つけられたもののダンスミュージックはちょっと惰性になってた面があるかもしれません。まともに聴き始めて5年目になるので仕方ないところかもしれませんが、好みもかなり硬直化していてどうにかしたいな、というのが最近のちょっとした心配事です。下半期もおそらくSpotifyという夢の箱をひっくり返して新しいアーティストを見つけて、ダンスミュージックはいつものやつだけ聴くというスタイルが続くような気もしますが、シーンの動向のチェックは欠かさないようにしたいです。年末には下半期トップ10と一緒に去年もやったチャートまとめをまたやりたいと思っているので、またよろしくお願いします。

Above & Beyondって、誰?

 

タイトルだけ乃木どこオマージュしました。内容に乃木どこは関係ありません。

 

さて、夏のビッグフェスであるサマーソニックにAbove & Beyondの出演が決定しました。個人的に2017年中の来日はないと思い込んでいただけに非常に驚きました。
しかし2017年現在、ヘッドライナーを務めるCalvin Harrisに比べてAbove & Beyondの日本での知名度、注目度が低いのは事実です。
以前からAbove & Beyondの紹介記事を書くつもりで、そしてサマーソニックに来る人に少しでもAbove & Beyondに興味を持ってもらいたい、ということで今回はAbove & Beyondを知らない、少しだけ知っているという方々へ向けた記事です。

 

 

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Above & Beyondは2000年にイギリスで結成された3人組のグループです。結成後すぐにMadonnaのリミックスを手がけ、2004年にリリースされた"Satellite"はUKシングルチャート19位にランクインしました。また、2016年には"We're All We Need"がグラミー賞にノミネートされるなど、その実力はトランス界屈指のものです。
実力とともに人気も兼ね備えており、2006年から2012年まで7年連続"DJmag Top 100"においてトップ10に、また2012年にMixmagが発表した"Greatest Dance Act Of All Time"では、上位にThe ProdigyDaft PunkThe Chemical Brothersなどそうそうたるアーティストが並ぶ中19位にランクインしています。
3人のうち右側、眼鏡をしたブロンドの短髪の男性がTony McGuiness(トニー・マッギネス)です。彼は最もAbove & Beyondの中でメディアへの露出が多く、フロントマン的な存在になっています(他の2人が全然出ないわけではありません)。
続いて左側の、眼鏡をしていないスキンヘッドの男性はJono Grant(ジョノ・グラント)です。おそらく楽曲制作の重要な部分を担当していると思われ、自身のtwitterでは時々作曲風景を公開しています。
最後に真ん中、黒髪で眼鏡をしている男性がPaavo Siljamaki(パーヴォ・シリャマキ)です。フィンランド出身である彼はいつもカメラを持ち歩いていたり、DJ中に一番ぴょんぴょん跳ねていたり、どことなくかわいいキャラクターの持ち主です。
彼らのキャリア初期と日本でのサイバートランスブームが重なっていたため、浜崎あゆみの"M"やELTの"Face The Change"をリミックスしていました。来日も何度かしており、前回は2015年1月のElectroxに出演しています。また、Paavoの奥さんは日本人であり、子どもにも日本風の名前をつけているなど、日本との関わりもあります。

 


Above & BeyondをAbove & Beyondたらしめているもっとも重要な要素は彼らが長年かけて形作ってきた世界観です。
現在の彼らの世界観の基礎となっているのは2011年にリリースされた"Group Therapy"というアルバムです。タイトルからわかる通り、サウンド面での激しさはかなり薄いアルバムで、美しくしなやかなメロディと弦楽器やピアノによる優しい音色により、豊かな表情と叙情性を持っています。
彼らが他のトランスのアーティストと異なる点は、サウンドとアーティスト自体のキャラクターの両方に「優しさ」や「穏やかさ」という面を大きく打ち出していることにあるでしょう。トランスと聞くと派手なサウンドでガンガン踊るための音楽、と思われる方も多いと思いますが(実際それは正しいものです)、彼らの楽曲は派手さを抑えたものが多く、マッシブさやダーティさが好まれる昨今のダンスミュージックシーンにおいて貴重な存在となっています。
また、彼らが主宰するレーベルであるAnjunabeatsと彼ら自身には熱狂的なファンが多く存在します。そのようなファンを"Anjunafamily"と称し、積極的に一体性を打ち出しており、先に挙げたアルバムのタイトルにも繋がるのですが「アーティストとその周囲の存在、そしてファンが全体で作り出す一体感」が非常に大きな魅力となっているのです。
後ほど詳しく説明しますが、視覚面でも他のアーティストにはない、彼ら独自の演出がなされており、それもまたファンを虜にする要素の一つになっています。

 


Above & Beyondは15年以上のキャリアがあるベテランであり、それゆえサウンドも今と昔で大きく変わりました。現在のDJで"Group Therapy"以前の曲が使われることはかなり少ないので、今回は最近のものに的を絞って紹介します。
他のアーティスト同様、彼らのDJでは必ずと言っていいほどプレイされる「定番曲」がいくつも存在します。


Above & Beyond pres. OceanLab "Another Chance" (Above & Beyond Club Mix) live at #ABGT200, Amsterdam

昨年、別プロジェクトであるOceanLabとして8年ぶりにリリースされた曲が"Another Chance"です。DJでは序盤にプレイされることが多く、ボーカルのJustine Suissaの透き通るような歌声とストリングスの重なり合いが非常に美しいものになっています。

 


Above & Beyond 'Sun & Moon' - Record Of The Week on TATW ep. #357

この曲は彼らの曲の中で最も有名な曲の一つです。"Group Therapy"に収録されており、印象的な歌詞がとても魅力的で、海外では必ずオーディエンスの大合唱となります。近頃はプレイされる頻度が少し減りましたが、流れれば最も盛り上がる一曲となるでしょう。

 


#ABGT100: Above & Beyond "Thing Called Love" Live from Madison Square Garden, New York

続いての曲も"Group Therapy"からシングルカットされた曲です。終盤にプレイされることが多く、ストレートな歌詞と共に映し出されるハートマークはとにかく記憶に残ります。

 


Above & Beyond '1001' live at #ABGT200, Amsterdam

先程までとは打って変わって、この曲はメロディよりもサウンドで聴かせるタイプの純粋なパーティチューンです。大きな会場でこそ映える、まさにビッグフェスのためにあるような曲です。

 


Above & Beyond - Blue Sky Action Feat. Alex Vargas (Above & Beyond Club Mix)

この曲は2015年にリリースされた"We Are All We Need"に収録されている曲です。明るいメロディが魅力的な曲ですが、こちらも後ほど説明する重要なタイミングでよくプレイされる曲なのでぜひ予習していただければと思います。


他にも有名な曲、定番の曲は数多く存在しますが、あまりたくさん載せると長くなりすぎるのでこの程度に留めておきます。YoutubeにはAbove & Beyond公式チャンネルがあり、そこではほぼ全ての曲が網羅されているので気になった方は検索してみてください。

 


Above & BeyondはDJの際、使用する曲のほとんど全てをAnjunabeatsの曲で固めているため統一された雰囲気を味わうことができます。また視覚面では他のEDMアーティストによく見られる複雑な素材をいくつも使った高度な映像ではなく、シンプルながら印象的なモチーフを多用し、ここでも差別化が図られているのですが、さらにその場で打ち込んでモニターに表示するテキストメッセージというものがあり、これが非常に重要な役目を担っています。
テキストメッセージを用いることで、プレイ中にマイクを取って話す必要がなく、オーディエンスは聴覚面で音楽に集中することができます。何を言っているのか聞き取りにくい、音楽の邪魔になる、といったことが起きなくなるので非常に合理的であり、またここから生み出されるメッセージが世界観の形成に決定的な役割を果たすものでもあるのです。
このテキストメッセージはよくある"1,2,3, Jump!"や"Put your hands up in the air!"などといった単純な客煽りではなく、歌詞をメッセージとして打ち込んだり、これからプレイする曲の簡単な紹介をしたり、現地の言語で挨拶をしたり、そして何よりも、小説の一節のような、詩的でメッセージ性の強い文章を伝えることが目的なのです。
その中でもいくつかお決まりのメッセージというものがあり、例えば"LIFE IS MADE OF SMALL MOMENTS LIKE THESE"というメッセージは彼らの曲のタイトルにもなっています。

Above & Beyond: Small Moments Like These - YouTube

 

これ以外にもいくつか個人的に好きなメッセージがあるのでその画像を載せておきます。

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これらのテキストメッセージから、盛り上げることだけに重きを置くありきたりなフェスDJとは違った、「優しさ」や「家族のような一体感」といったAbove & Beyondらしさを少しは感じていただけると思います。

 


もう一つ、彼らのDJで忘れてはいけないイベントがあります。"Push The Button"というものです。
曲紹介でちらりと書いた「重要なタイミング」というのはこのことで、プレイ中に曲を一旦ストップして観客をステージに呼び、その観客にCDJの再生ボタンを押してもらう、というオーディエンス参加型の演出です。


Two Generations Push The Button at EDC Las Vegas 2016

おそらく、全Above & Beyondファンの夢であり、会場の熱気が最高潮になる瞬間でしょう。このためにとても凝った作りのサインボードを準備したり、少しでも目立つ格好をしたりとアピール合戦が起きるのですが、そういった行動を通すことで「イベントに自分も参加している」という意識がより強くなり、ただ音楽を聴くというだけに留まらないイベントへと変化するのです。(自分もPush The Buttonのために全力で準備していくつもりです)
この演出があることで、選ばれたファンには一生の思い出になり、選ばれなかったファンも選ばれた人に声援と拍手を送り、Above & Beyondはファンと最も近い距離で交流でき、全ての人々が一体になることができるとても幸せな演出だと言えるのではないでしょうか。

 


サマーソニックは8月19日、20日に開催されますが、Above & Beyondにとっての大イベントがそのちょうど4週間後に開催されます。

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ABGTというのは"Above & Beyond Group Therapy"という彼らのラジオショーのタイトルであり、その年に1度のマイルストーンイベントがこの250です。(このイベントがUltra Japanともろ被りだったので2017年の来日はないと思ってました。企画会社には感謝しかありません)
このイベントでは毎年新曲がぐっと詰め込まれたまさにお祭りのようなDJが披露されるのですが、今年は史上初めて週末2日間での開催になり、ファンは驚きと歓喜に包まれました。
そして、最近の彼らの動きから見て、ほぼ間違いなくABGT250に合わせて新アルバムのリリースがアナウンスされるでしょう。今までの例からすると、アルバムリリース前にいくつかシングルカットされるので、もしかするとサマーソニック開催前にアルバム新曲がリリースされているかもしれません。
2016年の暮れ頃からinstagramなどで新たな作品の制作風景をいくつかアップしていた彼らですが、今年の2月にインドで開かれたイベントでそのアルバムに収録されると思われる新曲を初披露しました。3月のUltra Miamiでもプレイしていたので、気になる方は動画をチェックしてみてください。

 


ここまで長々とAbove & Beyondについて説明してきましたが、これを読んでどんな人達なのかわかった、曲を聴いてみよう、という気持ちになった人が居ればそれ以上に嬉しいことはありません。
Above & Beyondに触れた瞬間、イベントに参加した瞬間から、あなたはAnjunafamilyの一員です。共にAbove & Beyondへの愛を分かち合いましょう。

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Above & Beyondと変わることの話



今月10日にAnjunabeats Volume 13が発売になります。前作から1年2ヶ月ぶりのカタログシリーズになります。
トラックリストによると、ABGT200でワールドプレミアされた曲を中心に現在のAnjunaを支えるアーティストの新曲が並び、さらにこれまでのAbove & Beyondの楽曲でも非常に高い知名度を誇るNo One On Earth (Gabriel & Dresden Remix)の新録版も収録されており、これも大きな目玉でしょう。
他にも気になる楽曲が多数あるのですが、今回の文章はAnjunabeats Volume 13の注目すべき点を紹介していくという内容ではありません。


このアルバムに収録され、またABGT200では一番のハイライトとなったAlright Now (Above & Beyond Club Mix)という曲がこれから続く文章の入り口です。


Alright Nowは、昨年11月にリリースされたOceanLabとして実に9年ぶりの新作であるAnother Chanceに続くJustine Suissaとの作品です。メロディにも歌詞にも希望が満ち溢れ、聴く者の心を包み込み、安らかな気持ちにさせてくれる美しい楽曲です。
この曲がABGT200でプレイされた際のBPMはほぼ128で、非常に心地よく聴こえました。この128というBPMが現在のダンスミュージックではとても馴染みの深い数字であることはこの文章を読まれる方であれば説明せずともご存知かと思われます。
どうして128がスタンダードになったのか、という経緯は勉強不足で詳しく知らないのですが、歴史的な背景を抜きにしてもこの速さの曲は万人が踊りやすい、楽しみやすいものだと個人的には感じています。
速すぎるのでついていくのが疲れるということもなく、遅すぎるので間延びしてしまうということもなく、特にEDM系のプログレッシブハウスやトランスのようにメロディを重視するジャンルの音楽でこの速さがスタンダードになったのはこういった点があるのではないだろうか、と感じます。
しかし、Volume 13のトレーラームービーに使用されていたAlright Nowを耳にした瞬間、違和感を覚えました。BPMが126になっていたのです。たった2の違いですが、かなり大きな差だという風に感じました。


実は先程名前を出したAnother Chanceのクラブミックス版もBPMが126です。この曲がリリースされたことはとてもうれしい出来事だったのですが、126だったことはとても残念でした。なぜ128にしなかったのかはわかりませんが、きっと彼らなりに根拠があるのでしょう。
ここ最近、Anjunabeatsからのリリースに少しづつ126の楽曲が並ぶようになりました。Another Chance以降まだ数曲ではありますが、今までになかった傾向です。GrumやCapa, TuskanaのようにPryda系のプログレッシブハウス色が強いアーティストは126やそれ以下の曲を出していましたが、あくまで主流だったのは128、あるいは130でした。
Alright Nowが126であることに気づいた直後、悲しいような寂しいような、なんとも言えない感傷的な気分に包まれてしまいました。たかだかBPMが2違うだけなのですが、どうにもそのことを受け入れきれなかったのです。
もちろんこの傾向が続かない可能性もありますし、もしAbove & Beyondが変わったとしても、正直に言えばすぐに慣れてしまうということも事実です。なのでこんな気分になっているのもきっと今だけなのだろう、とは思います。


Anjunaというブランドにはこの夏に大きな変化がありました。ロゴ、ジャケットデザイン、制作物に使われていたフォントを大きく変更し、ビジュアル面でそれまでのイメージを一気に刷新したのです。
もっともよく目にするであろうシングルリリースのジャケットは必要最小限の情報を提供するだけでありながら、整ったデザインでインテリジェンスを感じさせるものでした。新たなデザインでは、特にフォントの変化によるものだと思いますが、それまでに比べるとかなりポップな印象を受けました。


Anjunabeatsは旧ジャケットが単色背景にロゴとクレジットを配置しただけという非常にシンプルなものでしたが、外側に枠が追加されクレジットの位置が変化し、目にした時の印象をより強くしたように感じられます。


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Anjunadeepだと、旧ジャケットではbeatsと同デザインながら、背景を統一し曲ごとに文字とロゴの色を変えていたものが、新ジャケットでは似たようなモチーフの背景画像を使用しながら変化させ、代わって文字色を統一するようになりました。
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今までのイメージを知る身からすると少しちぐはぐに感じる部分もあります。クレジットとロゴのセンターがずれていることはその最たる例で、一度気付いてしまって以降どうしても目が向くようになりました。海外のファンが集う掲示板でも新しいデザインは概ねマイナスな評価が多く、fワードを使ったかなり強い否定も見られました。
この変化に関して言うと、あまりにも大きな変化だったので最初は受け入れられない気持ちがかなり大きく、すぐにでも戻してはくれないだろうか、と考えることもありました。ですが先述の通り結局すぐに慣れてしまい、新しいデザインもこれはこれで悪くないかなと今は感じています。


今までにこれほど大きな変化があったのは、2012年に彼らのラジオショーだったTrance Around The Worldというプログラムが、新しいアルバムを契機にAbove & Beyond Group Therapyというプログラムに一新されたことが挙げられます。
単なるタイトルの変更というだけでなく、内容もTATWとABGTで、移行の前後では流石に似通っているにしても、まさに別番組と言って過言ではない程に変化しています。同じトランスのラジオショーであるArminのASOTが微妙な変更を一時的に試したものの、結局はほぼ変わらないフォーマットで800回もの放送をこなしているのとは対照的です。
今回も変化の背景にも、新アルバムのリリースという彼らにとって大きな仕事が関わっているのではないかと考えられます。それを裏付けるように、Above & Beyondに欠かせないパートナーの一人であるZoë JohnstonのFacebookには、彼女が撮影したと思われるスタジオでのJonoとTonyの写真がアップされ、さらにOceanLabの要であるJustine Suissaのinstagramにも新たなアルバムの制作をうかがわせる投稿がありました。
いつ発表されるのかなどといった情報は一切ありませんが、既に新しい一枚の制作に入っていることは確かなようです。


Anjunabeatsからのリリース傾向の変化、そしてビジュアル面での変化、どちらもAbove & Beyondが決定に関わっているのはレーベル運営という立場上間違いのないことです。
Above & Beyondの3人がこの変化を、新しくなることを良いものだと信じているからこそこういうディレクションになっているのだと思います。
Anjunaが大きな変化の過程にあることは事実であり、変化していくこと、変化しないこと、どちらが良いのか自分には判断ができません。新しいAnjunaも古いAnjunaも、どちらも心から敬愛しているからです。
Above & Beyondは変わっていくことを選びました。何度かの大きな変化を経験しながら、しかし自分たちのアイデンティティを失うことなくまた新たなステージへと進みつつあるAbove & BeyondとAnjunaという存在。変化を通じてもなお失われることのない彼ららしさに強く惹かれ、感動し、影響され、動かされ、その結果彼らに対する崇拝とも言うべき強い愛情が生まれました。


"LIFE IS MADE OF SMALL MOMENTS LIKE THESE"というAbove & Beyondのファンの間ではあまりにも有名なメッセージがあります。
いま抱えているこの気持ちは遠からず自分の中で咀嚼され、忘れ去ってしまうものかもしれません。しかしこの瞬間に感じていることは、たとえ小さな感情のゆらぎであっても、何らかの形で自らの世界に還元されると信じています。
彼らもまた、自らの歴史における一瞬の積み重ねの上に今があり、そして形を変え続けながらも"Above & Beyond"という世界観を我々に魅せてくれているのです。
今まさに起こっている変化は、自分にとっても彼らにとってもこのメッセージを体現している。そう思えてなりません。